第4回ベルギー王国ビール探訪記(7)

3日目(1)
1.シリー醸造所 Brasserie de Silly
2.Aux 9 Tilleuls

 シリー醸造所Brasserie de Silly

シリー醸造所の駐車場

 ベルギー3日目(1月10日日)は、ワロニアの醸造所2箇所(シリー醸造所とフリアート醸造所)を訪問する予定になっている。
 今日は、全員揃い、山田さんの運転でSillyの町へ向かう。相当寒い。車の中では、昨日どこに行ったのか、お互いの行動を発表しあう。山田さんたち一行は、ジュ・ド・ヴァル広場のあと、予定どおりブルージュ、ゲント方面へ行かれたようである。特にダムDammeのブリューゲル(Bruegel)というレストランでは豪華な食事をされたそうで、ビール以外にも料理に合わせCh.カロンセギュールを飲んだが、とても美味しく、また安かったという話を聞かされ、羨ましい限りであった。帰ってきたのは夜中の12時過ぎというから、意外とハードなスケジュールでもあり、一緒に行かなくて良かったとも言える。このころから、このツアーには「地獄のツアー」との名前が付きはじめたのである。そして、車の中での合唱「今日もお酒が飲めるのは、山田さんのおかげです。」というのも合言葉となった。

 さて、シリー醸造所にはちょっと早く着いたようで、とりあえず醸造所の駐車場に車を置く。社長さんが出てきたが、説明する者がいないのでもう少し待ってくれということだった。そこで、シリーの町を探索ということで近くを歩くが、シリー醸造所からすぐの場所に広場、教会、役場、レストランがあり、醸造所は町のほぼ中央に立地していた。人口は3000人ということである。

シリーの教会
醸造所の正門 案内はセールス・マネージャー

 一回りしてきて頃よい時間になったので醸造所の門をくぐる。

案内してくれたのは、セールス・マネージャーである。 まず、シリー醸造所の水であるが、これは地下85mから地下水を汲み上げているという。この水には鉄分を含むということである。私は、日本に輸入されているこの醸造所のビールの味わいにどこか硬質な金属的な味わいを感じていたのだが、それは水の性質のためだとわかった。

モルトのブレンド器
(天井に3本のモルトのパイプライン)

 中に入り、醸造設備の説明を受ける。まず、麦芽ブレンド機である。モルト(麦芽)は3種類を使用するということで、モルトは破砕しないでブレンドする。3本のパイプラインでモルトのブレンド機にモルトが送られてくる。麦芽破砕機かと思ったがブレンド機ということであった。破砕しないのである。
 使用するモルトはアロマ、クリスタル、ガテイネ?ということだが、パンフレットにはペールモルト、ダークモルトとの記述もあり、また、白ビールであるTITIJには、小麦Wheatも使用しているので、よくわからない。

 ブレンドされたモルトは、マッシュタンクで糖化される。となりの部屋にはホップやスパイスの袋を貯蔵するへやがある。
 ホップはハラタウやザーツ、チャレンジャーやケント・ゴールディングスなどさまざまなホップをビールによって使いわけている。
 ホワイトビールのTITIJには、コリアンダーとオレンジピールのスパイスが使われる。

マッシュタンク(糖化漕) 作業中 ホップやスパイスの倉庫

部屋を移って、発酵タンクへ。ビールはピルスナーを除き、上面発酵である。

発酵タンク 発酵中のビール 別の場所にも発酵タンクがある。

 貯蔵タンクは別棟にある。発酵タンクがある建物から一度外に出る。貯蔵タンクの前に置いてある器具はろ過装置であり、ビールはすべてろ過するのだという。ゼゾン・シリーやいくつかのビールは少し濁っていたと記憶していたので、全製品ろ過しているという話には驚いた。

貯蔵タンク ろ過装置

 また、先ほどの建物に戻ってきて、樽詰めの工程を見学する。樽(ケグ)は、煮沸消毒されたのち、ビールが詰められる。ピルスナー用と上面発酵用、さらには輸出用では樽の容量が異なるという。瓶詰めのラインは稼動していなかったが、流れについて一通りの説明を受ける。王冠をする器具の前では、「未使用の王冠は珍しいよ」といって王冠を皆に1つづつくれた。

樽(ケグ)は煮沸ごビールが詰められる 瓶詰のライン
サーバーからビールを注ぐ

 さて、一通り説明を受けたので、事務室の脇を通り、試飲室へ向かった。試飲室にはビア・サーバーが4本と冷蔵庫があった。まず、ホワイトビールのTITIJをサーバーから注ぎ、みんなに差し出した。そのあとは「お好みのビールをどうぞ」ということで、結局この醸造所で作っているビール全種類を試飲することになった。ティチェ以外は冷蔵庫に入っていた瓶ビールである。ビールは以下のとおり。

  1. ティチェ Titij 4.7%
  2. セゾン・シリー Silly Saison 5.3%
  3. ダブル・アンギャン・ブロンド Double Enghien Blonde 7.5%
  4. ダブル・アンギャン・ブリュヌ Double Enghien Brune 8.5%
  5. スコッチ・シリー Scotch Silly 8%
  6. シリー・ピルス Silly Pils 5%
  7. ラ・デヴィン La Divine 9.5%
  8. スーパー64 Super 64 5.2%
  9. ダブル・アンギャン・ブロンド・マグナム
Titij 4.7% La Divine 9.5% Double Enghien
Blonde 7.5%
Scotch Silly 8%

 まず1のティチェ(Titij)は、コリアンダーとオレンジピールがスパイスとして使われているが、はっきりとそれとわかる味。銘柄のティチェTitijとは隣町のアンギャン(Enghien)の人たちのことを指す言葉だという。醸造所で味わうビールは格別。変なクセはまるでない。

 この醸造所の本当の意味での主力商品は、2のセゾン・シリーSilly Saisonである。セゾン・ビールとは何か?これが今回のツアーの一つのテーマである。そしてその質問をぶつけると、回答は「昔、農家が冬仕込んで、夏の農作業中に飲むためのビールです。」というまるでマイケル・ジャクソンの本どおりの回答。セゾン・ビールのタイプとは?と再び聞いても、「よくわからない。」「アルコール度数はそんなに高くない。」という答え。どうも醸造所の人でもセゾン・ビールとは何かよくわからないまま伝統的な方法で醸造しているだけのようである。科学的分析などあまり関係ないのかもしれない。美味しければそでれいいだろうという感じである。
 しかし、こんな話も聞かせてもらえた。昔、農作業中にビールを提供するのが、農夫の雇用条件の一つであって、うちは何リットルうちは何リットルという風に競争が生じたという。シリーの記録によると、給料の他に、毎日8リットルのビールを与え、労働力の確保に努めたという。

 ダブル・アンギャンは2種類あり、マグナムも生産している。アンギャンは隣町の名前である。

 スコッチ・シリーは本当に美味しいビールである。ラ・デヴィンもスコッチ・シリーのような暗いアンバー色であるが、より透明感がある。ビールをろ過しているということは、このビールを見るとよくわかる。

 シリー・ピルス(Silly Pils)は、素晴らしい味わいを持ったピルスである。ベルギービールではピルスナータイプのビールは大抵どこの醸造所も醸造しているにもかかわらず、日本には上面発酵のスペシャルビールが主に輸入されている。ピルスナーはステラ・アルトワとマースぐらいしか手に入らない。ベルギーでは生産の70%がピスルナータイプであるので、日本に知られていないピルスナーはかなり多い。シリー・ピルスのように本当に美味しいピルスも一緒に輸入されないと、ベルギービールやベルギーの醸造所の本当の姿はわからないであろう。
 しかし、「本当のビールは、上面発酵のビールです。ピルスは本当は売れて欲しくないが一番の売れ筋なので醸造しています。」ということである。

 スーパー64は、前日に飲んだ樽生よりも、醸造所で味わう瓶ビールの方が美味しいのはなぜだろう。

 ここで試飲したビールの他に、アルコール度数の低いテーブルビールが生産量の1.2%を占めているという。

社長General managerのDidier Van der Haegenさん(中央) 昔の醸造所の車
(記念行事の時に使用している。)

最後に社長General managerのハーゲン(Didier Van der Haegen)さんも再び顔を出し、グラスやコースターなどいろいろなものをいただき、醸造所をあとにした。

【データ】 Brasserie de Silly (Rue Ville-Basse,141 7830 Silly )
Tel 32(0)68.55.16.95 /Fax 32(0)68.56.84.36
http://www.silly-beer.com

 Aux 9 Tilleuls

石割の木 シリーの看板

 シリー醸造所の案内で、街の広場にあるAux 9 Tilleulsというレストランで昼食ということで、店に向かう。

 途中説明の中で、広場を取り巻く通りの並木は菩提樹で、その木は昔のレンガの壁をそのまま取り込んでしまって、幹の中にレンガが見えるという。「石割の木」と呼ばれているそうだ。これが1本だけではなく、どの木も皆そうであるから不思議なものである。

 さて、店の前でシリー醸造所の人と別れる。店に入ると、人口が少ない割には店の客が多い。実は結構有名な店らしく、遠くから来た人たちが多いようである。車でわざわざ訪れる価値のある店というなのだろう、駐車場には車が結構止まっている。

 メニューは、山田さんに教えてもらわないとちょっと皆注文できない。適当に山田さんに頼んでもらい、みんなで分けて食べることにする。アントレではJambon de Canpagne Crudités、Scampis à l'ailなど、メインはRognons de Vear Beauge(腎臓の料理)、うずら、Tボーンステーキなどを注文する。
 ビールは、シリー醸造所のティチェTITIJの瓶をみんなで注文。このティチェの瓶は、醸造所が近くにあるというのに、日本に輸入されているビールと同じクセを感じた。醸造所で味わった樽生の好感度が★★★★なら、この瓶は★★でやや残念である。日本への輸送の問題で味が変わるだけではないようである。
 次のビールはダブル・アンギャン・ブロンド樽生である。

 料理はかなり美味く、ロニョンなど珍しい料理も食べることができて満足。しかし、一行の中には、昨日以来不調をきたした人も現れ、水(Vittel)を飲むということになってしまった人も。いよいよ地獄のツアーらしくなってきた。

Aux 9 Tilleuls 20年以上前のアンティークなビールボトル Vittelを飲む人も現れた。
Jambon de Canpagne Crudités Scampis à l'ail
Rognons de Vear Beauge
ロニョンとは腎臓
うずら Tボーンステーキ
【データ】 Aux 9 Tilleuls (Place Communale, 24 7830 Silly)
Tel 068/56.85.27 月曜休

さて、お腹もいっぱい、ビールも一杯飲んで満足。我々は次なる目的地、フルアート醸造所に向かった。車の中で合唱「今日もお酒が飲めるのは、山田さんのおかげです。」


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