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第2回ベルギー王国ビール探訪記(14)
ビール関連情報(3)
◆ランビックビールのブレンダー
昔から麦汁だけを他の醸造所に卸したり、ランビックを他のブレンダーに卸すということが行われていたランビックビールであ
るが、現在ブレンド専門のメーカーはハンセンスHANSSENSだけ、カフェではドリー・フォンテネンDRIE
FONTEINENだけになってしまった。 ブレンドのために購入するのは、麦汁にホップが加えられ煮沸濃縮されたもので、冷却槽で一晩冷却する際、野性酵母が屋根から降り注
いだ麦汁である。
我々は、ゲントのカフェ、トロルケルダーでハンセン・クリークHANSSENS
KRIEKを味わったが、途轍もなく香り高く、今まで味わ
ったことのない濃縮さがあった。樽とフルーツ、そしてしっかりした酸味が見事に調和して素晴らしい。これぞブレンドの妙技。瓶にはラベルがなく、赤色の絵の具(石灰塗料)が刷毛で一筋塗られているだけで、この絵の具の赤が外見から中身がクリークであることを証明する唯
一のものとなっている。
ドリー・フォンテネン・クリークDRIE FONTEINEN KRIEKは、ブリュッセルのカフェ、シェ・ムーデル・ランビックで味わった。
DRIE FONTEINEN(蘭)は「3つの泉」の意で、ジラルダンGIRARDIN醸造所、ブーンBOON醸造所、リンデマンスLINDEMANS醸造所の3ヵ所
の麦汁をブレンドしているという。1996年1月30日に瓶詰したもので、賞味期間は5年間であると瓶のタスキに書いてあった。瓶には
ハンセンと同じように一筋の赤色の絵の具が塗られている。鋭い酸味と樽味、チェリーの果実味が調和している。飲み易いように甘
味を付けたランビックビールが多い中、甘味を付けずとも美味しく飲める本来のランビックビールの神髄を見た感じである。
ところで、シェ・ムーデル・ランビックChezMoederLambic という店の名も、Chez(仏)は「家」とか「店」の意、Moeder(蘭)はMother(英)「母」の意で、非常にランビックに因んだ名である。
この店も昔はブレンドしたランビックビールを造り、飲ませていたのではなかろうか。ビールを注文すると地下の保管庫から取って
くるようだが、その地下こそがブレンドしたランビックビールを熟成させるための熟成庫の名残りではなかろうか。この店が
1000種類以上のビールをメニューに載せ、変質させることなく客に提供できる秘密は、現在は保管庫として利用している広い地下熟成庫にあると思えるのだが。
(奉行)
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