第6回ベルギー王国ビール探訪記(9)

4日目(2)
4.Boortmalt  (ボールトモルト社)
5.ブリュッセルへ
6.Le Brasse Temps (ブラス・テンプ)
7.ホテルにて

 Boortmalt  (ボールトモルト社)

 Het Pomphuisでの美味しい昼食ののち、次はモルト工場を見学すべく、アントワープ港内の道路を走る。一番の近道が途中、跳ね橋がちょうどあがっていて通行できない。
 船が通り過ぎ橋が通行できるまで待つほど暢気ではなく、遠回りでモルト会社まで行く。
 我々が訪れたBoortmaltボールトモルト社は、ベルギーに本社を置く、世界的な麦芽製造メーカーである。全世界で308,000 t 、アントワープでは内110,000 t を生産している。アントワープ港は、ヨーロッパで2番目に大きい港で、デンマーク、ドイツ、フランス、イギリス、オランダ、ベルギーなどの大麦がこのアントワープの工場で麦芽にされて、すぐに港から出荷されていく。非常に立地条件がよくその分、安く麦芽が供給できるのだという。
 はじめに、1924年に創業した最初の工場(Boortmeerbeek工場)のオフィスに行く。

Boortmeerbeek工場

オフィスからスヘルデ川を望む
エレベーターは古く、ガッタン、ガッタンと動きちょっと怖い。オフィスからの眺めは最高で、アントワープ港の全体を眺望できる。南を見ると、スヘルデ川、アントワープ旧市街であり、高くそびえる尖塔が、ノートルダム大聖堂だとすぐにわかる。
 しばらくオフィスに留まった後、再び移動。Antwerpen工場に向かう。こちらは1987年に穀物ターミナルSOBELGRAを買収して得たものである。

Antwerpen工場

穀物ターミナル・SOBELGRA

Antwerpen工場(パンフレットから)

もう1棟建設中(2004年完成)
 こちらの工場は、円柱状の2つの建物からできている。低い方が1988年に出来た年産55,000 t の能力を持つ工場で、高い方が1992年の完成した年産110,000 t の能力を持つ工場である。敷地にはまだもう1棟建設中であった(2004年完成)。
 Peter De Schouwerペーター・デスカウエルさんの案内で工場を見学する。工程は簡単で1.麦を水に浸す。2.発芽成長させ麦芽にする。3.麦芽を乾燥させる。4.成長をストップさせる。9日間でこのサイクルを行うということであった。
 麦芽にする工程はそんなに難しくないが、60℃で乾燥させる部屋とかは、非常に蒸し暑く、メガネをかけている者にとっては、レンズが曇ったり(カメラのレンズも同様)、結構苦痛の見学であった。
 こうして完成したモルトは穀物ターミナルで保存され、すぐ側に接岸する運送船やトラックに麦芽が積まれ、醸造所に送られていく。
 見学が終わり、ここで、デスカウエル姉弟と別れ、我々はブリュッセルに戻った。
【データ】 Boortmalt N.V.Antwerpen Zandvoort 2 - Kaai 350, 2030 Antwerpen
Tel. : 32. (0)3 / 545 04 51 and 52/ Fax : 32. (0)3 / 545 04 53
Boortmalt N.V.Boortmeerbeek Dorpsstraat 11, 3190 Boortmeerbeek
Tel. : 32. (0)15 / 50 11 11 Fax : 32. (0)15 / 50 11 99
http://www.boortmalt.com

 ブリュッセルへ


NATO
 アントワープからブリュッセルに戻る間に、どんどん暗くなってきた。途中、照明が非常に明るく照らす施設が続いたが、そこはNATOの施設なのだという。そうブリュッセルは、EUの中心であって、NATOの本部も所在するヨーロッパの中心という顔を持っていることを、改めて感じさせられた。

 このあとのスケジュールは、ブリュッセルのホテルで解散なのだが、以前尋ねたことがあるブッシュ・ビールのDubuissonデュビュイッソンさんが我々のホテルに尋ねてきて、車でルーヴァン・ラ・ヌーヴにある自分が経営するブルー・パブに連れて行ってくれるという話であった。

 Le Brasse Temps (ブラス・テンプ)


Le Brasse Temps
 結局、全員がデュビュイッソンさんとルーヴァン・ラ・ヌーヴに行くことになった。デュビュイッソンさん自身が運転する車とタクシーとでルーヴァン・ラ・ヌーヴに向かう。夜の7時半ころブリュッセル出発である。30分程度でルーヴァン・ラ・ヌーヴに着く。
 Le Brasse Tempsは、まさしく地ビール・レストランである。ルーヴァン(ルーヴェン)大学が言語戦争により、1968年に2分し、フランス語学生がルーヴェン・ラ・ヌーヴのルーヴァン新大学に通うことになった。500年の伝統を誇る大学が2分するという凄い事件である。この新ルーヴァン市は大学のために新しく作られた町である。こののLe Brasse Tempsも学生が利用することを前提とした店になっている。
 メニューには、スパゲッティやハンバーガーなどお手軽な料理が並んでいる。ここで醸造するビールも当然メニューにあるが、アルコール度数が4.5%、5.5%といったブッシュ・ビールの強いイメージとは全く異なるビールを造っている。これは、やはり学生相手で酔わないビール造りを目指したものと言える。

Poulet à l'estragon

Les Croques コロッケ
 ビールは、Rafaleという4種セットを注文する。4種類の内訳は、1.La Cuvee des Trolls、 2.La Ambrasse-Temps、 3.La Blanche-Nevre 4.Bush 7%である。このうち1〜3がここで醸造されているビールである。La Cuvee des Trolls生は、キレイな味わいだが、ろ過されて物足りない★★。La Ambrasse-Temps生もやはりキレイだが、ろ過されて味わい不足★☆。La Blanche-Nevre生は濁っていて期待させるが、スムーズな喉越しだが、味わい不足★☆。Bush 7%生はやや薄く濁っており、スパイシーで美味しい★★★。
 さらに、Bush Blond 樽生(10%)-ろ過されている。やや甘味がありコクよし。スムーズな喉越し。まろやかだが、アルコール感あり。★★★
 Bush Amber樽生(12%)-ろ過されている。強いアルコール感がコクを生むが、実は単純なスパイシーさと苦味。苦味が主張されたビールとして可。★★★。
 Bush de Noël樽生(12%)-色が瓶物よりも薄い。充実していたはずの味わいのバランスが弱まっている。つまり水で薄めた様。ただし、薬味のみは変わっていないというバランスである。★★☆。

Rafale(4種セット)

La Blanche-Nevre(4.5%)

La Cuvee des Trolls (7% )

La Ambrasse-Temps(5.5%)

Bush 7%(7%)

Bush Amber樽生(12%)
 
 デュビュイッソンさんは、食事中にブッシュBush 7%について語った。Bush 7%は、強いビールばかりのブッシュのラインナップにアルコールの弱いビールを加えたかったので造ったビールであった。でも、消費者がブッシュに求めるイメージは強いビールであったので、なかなか売れない。そこで醸造をやめる事にした、という。
 食事も終わり、デュビュイッソンさんは醸造設備を説明してくれるという。
 醸造設備は小型の設備の醸造所ではよく見かけるMeura社の物。レストランと同じ階に醸造釜が設置してあり、ガラス張りでお客さんからよく見えるようになっている。その他の設備は階下にある。レストランで供する樽生ビールの樽も階下で繋がれた樽から供給されている。
 この設備で醸造されているビールは、先にも書いたLa Cuvee des Trolls、 La Ambrasse-Temps、 La Blanche-Nevreの3種類である。
 ルーヴェン・ラ・ヌーヴのルーヴァン新大学に通う学生を顧客とするので、ビールのアルコール度数もそこそこ抑えてある。ベルギービールがこんなビールでいいのかとも思えるし。ましてやブッシュ・ビールとは全く異なる造りに違和感を覚えた。(※結局、2003年廃業に及んだ。)
 
 ブラス・テンプでの食事が終わり、ブリュッセルに帰るが、帰りは再びデュビュイッソンさん運手の車とタクシーである。
 ここで、デュビュイッソンさん運手の車に同乗したした者たちは、恐怖を味わうことになる。ブリュッセルとの往復は高速道路を使用するが、帰りのデュビュイッソンさんは、完全に酔っ払っていたのである。もともとベルギー人は、ヨーロッパ人の中でも危険な運転をするということで評判らしいが、センターラインを右ヘ左へふらふら。私は、体が大きいので、助手席に座るよう行きも帰りも言われて座っていたが、まさしく恐怖の体験。無事ブリュッセルに到着して、ホッと一安心である。
 ホテルに皆到着し、解散。

【データ】 Le Brasse-Temps
4 Place des Brabancons, 1348 Louvain-la-Neuve
2003年ルーヴァン・ラ・ヌーヴ店廃業 
(※2003年モンスMons店開業)
Boulevard Initialis 1, 7000 Mons

ホテルにて

 ホテル到着。だがブラス・テンプでも満足できるビールをまだ飲んでいない。とにかく美味しいビールをとことん飲みたい。ルーヴァン・ラ・ヌーヴに出発前にちょっと買出ししておいたビールを部屋で味わう。
  'S Lands Souvenirs'du Terroirは、リンデマンがスーパーGB用に造るクリーク。甘味も有るが、クリークの風味がかなり強い。スムーズでフレッシュ。旨い★★★。
  ベルギービールで謎のビールはJohn Martin社のビールである。元はインポーターで英国の醸造所にベルギー向けのビールを委託醸造させ、輸入していた。それをベルギーの醸造所に委託醸造先を変えて醸造しているのだが、醸造所は不明である。結構有名なビールなので大きい醸造所だと思われる。そうした身分不詳のビールなので、私は基本的に避けてきたビールである。John Martin's Original Aleは、アルコール5.8%のいわゆる(英国のエールに似た)ベルギーエール、Pale Aleである。苦味が強くBitter、発泡感が強いのでいつまでも喉の奥に残る。意外としっかりした味わい。カンゾウのスパイスが効いていて好みが分かれそう。ろ過されたビール。★★★。
 Leffe Tripel 8は、レフ・シリーズの中で唯一日本に正規輸入されていないビール。このトリプルだけが醸造所を異にするためだろうか。味わいはレフ・シリーズの延長上にあり、フルーティな香り。コリアンダー風味で濃醇な口当たり。スパイシーさがある。泡立ちよく、発泡感があり、濁っていて、これぞベルギービールであると主張している。★★★。
 次に、ゴロワーズ・シリーズ3種類。La Gauloise Blondは、ほんのり薄く濁るが、キレイで軽い。コリアンダー味★★☆。La Gauloise Ambréeは、やや硬質感がある。これもほんのり薄く濁るていどでクリアー。苦味とスパイシーさがある。★★☆。La Gauloise Bruneはかなりスパイシーであるがローストされた麦芽の甘味とコクが感じられるボリュームあるビール。★★★。

'S Lands
Souvenirs'du Terroir

(3.5% 25cl)
Br.Lindemans

John Martin's
Original Ale

(5.8% 33cl)
John Martin

Leffe Tripel 8
(8.4% 33cl)
Brouwerij Hoegaarden
(Interbrew)

La Gauloise Blond、Brune、Ambrée
(6.3% 、8.1%、5.5% 33cl)
Br.Du Bocq
 これらのビールを味わっているうちに、夜も遅くなったので、就寝。ここまでで52種類のビールを味わった。目標の100種類まであと半分。だが、もう4日目が終わり、あと実質3日。同伴の与力や代官は今回は100種類は目指さないと言っており、私一人では限界もありちょっと遅れている。


4日目(1) 5日目(1)

ベルギービールの魅力
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