Brouwerij Liefmans リーフマンス醸造所
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醸造所はスヘルデ川のほとりにある |
ベルギー3日目の朝。朝9時ホテルロビー集合。天気は雨である。リーフマンス醸造所がある0udenaadeアウデナードゥまでブリュッセルから車で1時間強。E40で西へ向かい、ゲントの手前でE17、さらにM60で南に向かいアウデナードゥに到着。以前アウデナードゥに来たときは醸造所を川岸の対岸から建物を見るに留まったが、やっと訪れることができた。この川はスヘルデ川で、川を下るとゲント、アントワープに至る。雨もちょうど上がった。
リーフマンス醸造所の創業は不明だが、1679年には醸造していたという記録が残っているという。300年以上の歴史の有る古い醸造所である。伝統あるフランダースのブラウン・ビールがどのように醸造されるのか興味深い。ただし、1990年からはリヴァRIVA醸造所の傘下に入り、すべての醸造工程がこの場所で行われているわけではない。アウデナードゥでは他にフェリックス醸造所とロマン醸造所があって、こちらの方が町のカフェで一般に置かれているビールであることは以前の探訪記で記したところである。
醸造所の駐車場に車を停めると、そこにはリヴァのトレーラーが停まっていた。トレーラーの車体にはデンテルヘムスDentergems、Carolus(グーデン・カロルス)、Brugse
Straffe Hendrikなどリヴァ・グループの醸造所のビール名が描かれており、リーフマンス醸造所もリヴァ・グループの一員であることが強く感じさせられた。
事務所を訪れしばらく待つと、フィリップ・デボルデル(※酔夢紀行にも登場し、ドヴォルダーと呼ばれていた人)さんが現れ、我々を事務所から醸造所の建物に案内した。
最初の説明は、マッシング・タンクである。上の階から麦芽が落として投入できるようになっているが、さすがに大規模な醸造所だけあって、設備が大型である。ただし、ここの工程は現在この建物では行われておらず、リヴァ醸造所で行われているという。
デボルデルさんの案内 |
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マッシングタンク |
天井に開閉できる扉がある |
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ウォートのプール |
冷却装置 |
冷却されたウォートが樋を流れる |
発酵槽 |
発酵中の泡の表面を掻きだす口 |
この醸造所で行われている工程は、麦汁(ウォート)の発酵からである。麦汁は系列のリヴァ醸造所でつくられタンクでリーフマン醸造所に運ばれてくる。発酵槽は開放式なので発酵中に外気との接触が心配されるが、それこそこのリーフマンのビールの味わいを特徴づけている主な要因なのだと感じた。すなわち、ビールにある酸味は、ランビックビール同様に野生酵母が引き起こしたものに違いない。
発酵した麦汁はかなりの泡で表面を被われるが、表面の泡だけを掻きだす装置がついていて、発酵槽のプール脇に流れ落ちるようになっている。上面発酵なので、この泡は酵母の集まりである。
掻きだした泡がバケツに保管されていた。 |
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泡を舐めてみる |
ちょうどバケツに保管されていたビールの泡があって、なめてみた。漬物のような臭い香りがし、イーストの苦味がある。
できあがったビールは、主に3つの製品となっていく。
もともと度数が低く造られたビールはタンクで熟成ののち、Liefmans Oud Bruinというアルコール5%の通常レギュラー商品となる。ほかに4.5%のLiefmans
Odnarというブラウンビールも同様である。
Liefmans Goudenbandは、Oud Bruinよりも濃度の濃いビールを造り、熟成の後、遠心分離機で分離し、Oud
Bruinと酵母、砂糖を加え、さらに熟成させたもの。
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リーフマン・クリークのタンク(扉) |
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リーフマン・クリークのタンク |
リーフマン・クリークのタンク(中) |
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タンクに残るクリークの粒 |
Liefmans Kriekは、毎年7月の終わり、年1回だけ醸造する。今では珍しくなったスカルベーク種のチェリーをホールのまま使用する。少なくとも1年熟成させたグーデンバンドの元となるビールに6〜7ヶ月チェリーを漬け込む。クリークのタンクが横長に設置されており、その巨大さに驚いた。横長に設置する理由は、チェリーがビールと接触する面積を稼ぐためだという。
ビールを取り出したあとのタンクの中を覗かせていただいたが、チェリーの粒がそのままの形で残っていた。なお、リーフマン・フランボワーズは果汁使用のビールである。
1本1本紙で巻く |
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醸造所で一番大きなボトル |
貯蔵室 |
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97年の日付があるビール |
リーフマンのビールの外観上の特徴として、ラベルがなく、包装紙で1本1本巻かれていることがあげられる。実際にその紙巻の工程を見学したが、ビールは作業員の方の手作業で1本1本紙に巻かれていた。この日は2人の作業員の方がいて、ケースから瓶を取り出し、紙の上に横に寝かせ、コロコロっと紙と瓶を一緒に転がし、巻き終わると持ち上げて瓶の底とネックの部分を整え完成させる。すぐにケースに入れると同時に次の瓶を取り出し紙巻を再び始める。この間その紙巻きのスピードたるや、1本につき約5秒という早業である。一ケース終わるとまた次のケースを持ってきてこの作業を繰り返す。いったい1日に何本のビールを巻くのであろうか。その妙技に我々もしばらく立ち止まって見学する。
さて、ケースは積まれて出荷を待つのみとなるのだが、一部のビールは長期熟成用の貯蔵庫に移されるようである。この倉庫には、1987年に造られたグーデンバンドが眠っていて、それは現在のオーナーが以前のオーナーから醸造所を購入した際、以前のオーナーが醸造したビールも一緒に引き継いだものなのだという。醸造所秘蔵のビールであるが販売権の関係で売ることはできないという。そう言われるとどうしても欲しくなるのが人情で、山田さんの懇願が通じたのか1本だけ譲り受けた。ラッキーな山田さんである。
醸造所の見学が終了し事務所の方に戻ってきた。ビールの試飲である。「みなさん、飲みたいビールを言ってください。」ということで、それぞれ注文する。ビアサーバーはあるが繋いでいないので樽生ビールは残念ながら注文できなかった。人気はリーフマン・クリークだが、せっかくなのでいろいろなビールを味わいたいと、グーデンバンド、フランボワーズ、そして、ヤン・ヴァン・ゲンの4種類を皆で味わう。
リーフマン・クリークは250mlの瓶で、紙で包装されていなくラベルが貼付されているもの。フレッシュでジュース味。果肉からの上品な果実味が素晴らしい味わいとバランスを見せている。4種類の中で素直に美味しいと思えるビール★★★★。フランボワーズは紙巻の375ml瓶。これもクリーク同様フレッシュで、素晴らしいビールだが、クリークの濃度や香りの高さの方が勝っていると感じてしまう★★★☆。グーデンバンドもフレッシュだが、このビールは熟成させた方がより味わい深くなるビールなので、まだビール自体硬質な感じで、まろやかになるまで待ちたい★★★。Jan
Van Gent ヤン・ヴァン・ゲンは、リーフマン醸造所の中では異質なビールである。以前、リーフマン醸造所のビールはブラウンビール(とそれをベースにしたフルーツビール)ばかりだったので、色の薄いビールを造りたかったのだそうだ。そして出来上がったのがJan
Van Gentヤン・ヴァン・ゲンというビールで、7年前(1995〜96年ころ?)に初めて造ったビールだという。ビール名のJan
Van Gentは、シロカツオドリの現地(オランダ語)での呼び名。学名Morus bassanus(Sula
bassana)/英名Northern Gannet。大型の海洋性の海鳥で、北大西洋に住んでいて、魚を食べていまる。40メートルの高さから急降下し海中に突入してイカや魚を捕らえることもあるという鳥。すっきりとしてキレイなビールだが、ちょっと味わい不足の感がある★★☆。日本ではあまり状態のよくないのを飲んでいたので、現地ではどうかと期待したが、それほどでもなかったのは残念である。
Liefmans Kriek
(5% 25cl) |
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Liefmans Frambozen
(4.5% 37.5cl) |
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Liefmans Goudenband
(8% 75cl) |
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Jan Van Gent
(5.5% 25cl) |
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ビールも味わい、あとはお土産を購入して・・・と、レストランの方に場所を移動した。ここにもビアサーバーが4本あったが繋いでいないようである。リーフマン・ピルスという銘柄のサーバーがあったので聞いてみると、「ピルスはリーフマン醸造所では造っていない。リヴァ醸造所で造っている」との話。
お土産用にビールの各種ビールの販売もあったが、さきほど山田さんがもらった1987年のグーデンバンドの古酒は無いのか尋ねると、なんと売ってくれるという。それも1本3ユーロという値段で売ってくれるというのだからお徳な話し。皆でオールド・ビールを購入する。また、ビールパテなど購入して満足する。
もうお昼の12時を過ぎており、昼食をとるため醸造所に別れを告げ、次のローデンバッハ醸造所のあるルースラーレRoeselareの町に移動した。
【データ】 |
Brouwerij Liefmans |
200 Aalststraat, B-9700 Oudenaarde, Oost-Vlaanderen |
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Tel:+32 055 31 13 92 FAX:+32 055 31 94 86 |
De Rijselpoort レストラン・レイセルポート
リーフマン醸造所を出発し、アウデナードゥの中心部に再び向かうとロマン醸造所の前を通った。そして、ルースラーレRoeselareの町に着いたのは1時40分ころであった。
ルースラーレのレストランは運転手のヤンさんが紹介してくれた店である。店の名前は Restaurant
De Rijselpoort レストラン・ドゥ・レイセルポート。我々が訪れた時間は昼食の時間を少し遅くなっていたので店のお客さんは少なかったが、角のテーブルに腰掛けていた2人のお客さんの1人はルースラーレ市のDaniel
Denys市長さんだと、ヤンさんが教えてくれた。地元の名士も訪れる有名なレストランのようである。
ビール三昧の我々にとって、ビールのメニューは気になるところだが、全然だめ。パルムしか置いていない。ワインや他の飲み物はある程度置いてはある。しかたがないので、全員パルム・スペシャルを注文する。
料理は、これから行くローデンバッハ醸造所を考え、うなぎのローデンバッハソースを注文した。
Restaurant De Rijselpoort |
Daniel Denysデニス市長(写真左) |
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Palm Spéciale |
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白ワイン |
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Palm Spécialeは、ちょっとローストした麦芽の香りがあるが普通のエールで、特徴のあまりない飲みやすいビールである★☆。
料理はなかなか美味しくいただいだが、ビールがパルムだけではつまらなかったので、白ワインをいただくことにした。フランスのヴァン・ド・ペイ物だったが、すっきりして美味しいものであった。ビールに限らず、状態がよいワインだと例ええそれが安いものでも本当に美味しく飲める。
さあ、いよいよローデンバッハ醸造所である。
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