第5回ベルギー王国ビール探訪記(17)

6日目(5) ランビックの日
8. Drie Fonteinen ドリー・フォンティネン (醸造所)
9. Drie Fonteinen ドリー・フォンティネン (レストラン)
10. ホテルにて

 3 Fonteinen ドリー・フォンティネン (醸造所)

 ドリー・ブロネンを出て100メートルほど歩いた教会のある広場にドリー・フォンティネンはある。もう大分暗くなってきた。ドリーフォンティネンを訪れるのは3回目。過去の記事2000.11999.1も参照して欲しい。
 今回は、醸造責任者であるお兄さんのアルマンArmand Debelderさんがいらしたので、詳しく醸造設備の説明や、そしてランビックに賭ける思いを聞くことができた。

モルトと小麦(Tarwe)

マッシュ・タンク
 麦芽はピルスナーモルトを使用し、麦芽破砕機で破砕の後、マッシュ・タンク(700リットル用)に入れられる。同様に小麦(ウィート、麦芽でない)も入れられるが、モルト60%、小麦40%の比率だそうである。水を加えて煮沸し、さらにホップを加えて長い時間をかけて糖分を抽出しウォートができる。ホップは、カンティヨンなど古いホップを使用するのが一般的には、ここでは新鮮なホップを使用している。

開放式の冷却槽(クール・タンク)

コンピューターで制御

冷却時には天窓(ルーフ)を開ける

ビールの王ガンブリヌスとベールセルの瓶
ランビックの酵母
Saccharomyces Bayanus
Saccharomyces Ovalis
Saccharomyces Globosus
Saccharomyces Cerevisiae
Klebsiella Apiculata
Brettanomyces Bruxellensis
Brettanomyces Lambicus
Brettanomyces Claussenii
Torulopsis Sp.
Candida Sp.
Cryptococcus Sp.
Pichia Sp.
Pediococcus Cerevisiae
・・・
 ウォートは、開放式の冷却槽(クール・タンク)に入れられ、一晩置かれ冷却されるが、その際、天窓(ルーフ)が開けられ、この地に生息する野生のランビック酵母がウォートに降り注ぐ。これでランビックの元が完成である。

 ベールセルの瓶が飾ってあったが、これを手にし説明によると、友人のゲントにあるプルーフ醸造所proefbrewrijで造っている無農薬の上面発酵ビールだという。ドリー・フォンティネンで造っているのではない。
 ミレミアム・グーズはボーン、リンデマン、ジラルダンをアルマンさんのテイストでブレンドしたものだという。


1998.12.16と12.17の日付がある樽。
初めて試験醸造をした時のもの。

こちらは1999年に醸造したもの。
醸造月日はいろいろ。
 さて、完成したウォートは樽に入れられ、発酵を開始する。樽の口には栓がされるが、その栓はきつく栓をしてはいけない。なぜなら樽の中での発酵により中から炭酸ガスと一緒に泡を噴き出してくるためである。発酵が終わると、1年から3年、樽で寝かせられる。ドリー・フォンティネンでは自家製のランビックのほか、ボーン、リンデマン、ジラルダンから購入した樽入りランビックをも熟成させ、熟成した1年から3年もののランビックを選び、ブレンドして瓶詰めする。瓶内では2次発酵が始まり、熟成してグーズとなる。であるからグーズには強い発泡性がある。
Lambik
3 Fonteinenオリジナルのランビック。1999.4の仕込み
Kriek
ジラルダンのもの。さくらんぼ(クリーク)はポーランド産
Gueze
Caveau 13
※1994、1995、1996を1997にブレンド。3794本製造
 樽の倉庫から場所を移して試飲室へ。ここは瓶の保管庫なのだが、今回250リットル用のタンクが3機設置されていて、この小さなタンクにはランビックとクリークが入っていた。中のビールの表面に接するように蓋が自由に動く構造であるので、ビールが酸化せずに、新鮮さを保っている。
 アルマンさんは、このタンクの蛇口をひねり、グラスに直接ランビックを注ぎいれ、我々に供してくれた。このランビックは、ドリー・フォンティネンで製造されたランビックで1999年4月の日付がタンクに書いてあった。柑橘系の酸味だが、ちょっとゆずを思わせる味わい。つぎに、陶器のピッチャーを手にし、再び蛇口をひねり、プッチャーにクリークを注ぎ入れ、そのあとグラスに小分けした。このクリークはジラルダンのものでサクランボはポーランド産であるという。
 最後に、ビール瓶が積み重ねられているところから1本取り出した。このビールは1997年のグーズで、1994、1995、1996のランビックを1997にブレンドして瓶詰めしたものである。サン・ニコラのお祭り(12/6)用に仕上げたものだという。「ベリー・スペシャル・テイスト」これは非売品で非常に大事にしてあるボトルなのだという。それを我々のために栓を開けようとしたが、コルクの栓がきつくてうまく開かなかったので、もう1本。こちらはちゃんとあいた。
 注ぎ方は、用意してあったグラスの表面をグラスを回しながらグーズで洗う。グラスを斜めにしてグーズを注ぎ入れ、グーズが満たされるにつれて、だんだんとグラスを垂直に起こしてくる。グラスの半分くらいが泡で、ものすごく発泡している。2つ目のグラスにも同様に注ぎ入れたあとグラスを並べて、さらにグーズを注ぎいれる。泡がグラスから溢れるが気にしない。見事な注ぎ方である。
 アルマンさんがいうには、ランビックビール造りは、お金のためではなく、皆さんが楽しく飲んでくれることが自分の幸せなのだという。現代はコンピューターを駆使した技術、温度管理によるビール醸造ができるが、ランビックは、自分の味覚で造る自分の生産物なのである、というこである。
 こうして約1時間ほどの説明を受け、場所を移動するため通路の階段を登るとレストランのカウンター脇に出た。
【データ】 BROUWERIJ 3 FONTEINEN
Hoogstraat 2A, 1650 Beersel
Tel: 02/306.71.03 Fax: 02/305.07.41
http://www.3fonteinen.be/

 3 Fonteinen ドリー・フォンティネン (レストラン)

 3(Drie) Fonteinenドリー・フォンティネンのレストラン部門を受け持つのは、アルマンさんの弟のギドGuido Debelderさん。
 我々は、レストランの奥の方の席に案内された。この部屋とは別にパーティ・ルームがさらに奥の醸造所の方にあり、かなり席数の多い大きなレストランである。
3 Fonteinenのメニュー
 メニューには、オーソドックスなベルギーの郷土料理が並ぶ。ビールの種類もドリー・フォンティネンのオリジナル・ランビック以外にもある。ハウスビールは、ドリー・フォンティネンではなく、Beersel銘柄のビール。さきほど説明を受けたプルーフ醸造所proefbrewrijのビールである。ベールセルの町の名を冠したご当地ビールということなのであろう。

LAMBIK

GUEUZE

KRIEK

FRAMBOOS

FARO
 料理とともに味わったランビックは5種類。まずはただのLAMBIKランビック。1 jaar op eiken vatとあり、1年樽物。醸造所のミニタンクのものより酸味が強い★★★★。GUEUZEグーズは、ついさきほど特別な古いボトルを味わった後なので、ちょっと若いフレッシュな感じがあるが素晴らしい★★★★。KRIEKクリークは、van Schaarrbeekse kriekenとあり、スカルベーク種のチェリーを使用したクリークである。さきほどのクリークは、ジラルダンのもので、ポーランド産のサクランボを使用したもので異なる。さらにレストランで提供しているクリークは甘い。甘味を付けているのではなく100%サクランボ由来の甘味である。一部のベルギー人のためにこの甘味あるクリークはあるのだそうだ。甘いが元々の酸味とのバランスがよい★★★☆。それにしても、何種類もクリークを持っていて、FRAMBOOSフランボワーズは、もの凄い酸味を持った傑物。今回の旅行で味わったランビック系のビールの中で一番酸っぱい★★★☆。FAROファロはランビックにキャンディシュガーを溶かし、甘く飲みやすくしたもの。ベースがランビックなのでやや弱い印象★★☆。
 以上5種類味わったが、このうちランビック、クリーク、ファロの3種類がカウンターのハンドポンプから注がれたもの。メニューを見ると、ハーフ・アンド・ハーフなんてものがあり、グーズ半分に甘いクリーク半分足したもの。いろいろな飲み方がある。

グーズ入りチーズ・
リンゴのグーズ煮 フランボワーズソース

ムール・ア・ラ・グーズ

ウサギのグーズ煮、カーボナード、
ターキーなど4品盛り合わせ

(デザート)
クレーム ブリュレ
 
【データ】 RESTAURANT 3 FONTEINEN
Herman Teirlinckplein 3, 1650 BEERSEL
Tel: 02.331.06.52
http://www.resto.be/driefonteinen.restaurant/

 ホテルにて


LA MÉDIVALE Ambrée
(6% 33cl)
Br.de Bouillon

TENTATION de la SEMOIS Ambée
(6% 33cl)
Br.de Bouillon

LA BOUILLONNAISE Brune
(7% 33cl)
Br.de Bouillon

UITZET Kriekbier
(5.8% 33cl)
Microbrouwerij Paeleman

LA SPÉCIALE FêTES
(8.5% 33cl)
Br.de Bouillon
 ドリー・フォンティネンでランビックビールを堪能したのち、ホテルに戻る。
いよいよ、明日帰国である。購入したビールは山ほどあり、全てを日本に持ち帰ることは不可能な本数である。少しでも本数を減らそうと、ビールを開ける。同室の代官にも手伝ってもらって、どんどん瓶を開けていく。
 LA MÉDIVALE Ambréeは、再挑戦。ワロニアのビールだが、日本の地ビールのような弱さがある。ホッピーでスパイシーで苦味もある。オレンジ風味★★★☆。TENTATION de la SEMOIS Ambéeは味わい、口当たりともLA MÉDIVALE Ambréeに似ている★★★☆。
 ここまで飲んだら、時計が夜中の12時を過ぎた。さらに飲み進める。
 LA BOUILLONNAISE Brune
は、ブラウン色だが、風味はさきの2本と同じ。同じレシピで麦芽の色だけが異なるようだ★★★。UITZET Kriekbier酸味があるが、クリークの味が薄い★☆。LA SPÉCIALE FêTESは、クリスマスビール。ブラウン色でローストした麦芽の味。 

6日目(4) 7日目

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