Atomium アトミウム
5日目は早朝、ホテル出発。車でまずアントワープを目指す。車で北を目指すとき、いつも気になっていた建造物がある。アトミウムである。たまには観光ということで、この日は、まだ、夜が薄っすらと明け始めた時間ではあるが、ちょっと寄ってみる。
アトミウムは、ブリュッセルの北の郊外にある万博公園に、1958年の万国博のとき建てられた建造物。その姿は鉄の分子の1650億倍の模型になっていて、一番上の球にある展望台までエレベーターで登ることができる。
一番下の球体が入口兼パヴィリオン。9個の球体のうち6個の中に入ることができる。そして入口の球体から斜め左上の球体、そこからまた右上の真中の球体にかけてはエスカレーターがあり、入口から真上の球体にはエレベーターが通っているとのこと。 一番上の球体は展望台(地上100m)になっており、ブラッセルの街が一望できる。
これと併設されて、ミニチュアタウンの「ミニヨーロッパ」があり、観光の名所となっている。
高速道路A2を北に向かい、アントワープへ約半分くらい近づいたあたりで見えてくるものがある。それはデュベルの醸造所である。まだ、薄暗かったので倉庫の縁に電球が灯り、ライトアップされている様子が見えた。壁には《SSST…HIER
RIJPT DEN DUVEL/シッ…(静かに)! デュヴェルがここで熟成している》と書かれている。以前、この交差点から左折し、ボステールス醸造所に向かったことがある。
アントワープに近づいてきたら、ウェストマレの方向(東)に右折しなければならない。ところが、運転の助手をしていた与力が地図を見あまり、とんでもないところで右折の指示を山田さんにしてしまった。「本当にここなんですか?もっと太い道路のような気がするんですが。」といって曲がってしまった。幹線道路ではない街中の道路。丁度ゴミ収集車が前にいたりで全く進まなかったりとさんざん。後尾のセッピィ運転の車も山田さん運転の車に追随して来れるのか不安で、私や代官は常に後ろをチェックしながら山田さんに報告。山田さんは信号の変わり目を無理に渡ってしまうので、セッピィ車が信号待ちとなって着いて来れないのである。
そうこうするうちなんとか幹線道路に出た。「アントワープに近づいて高速道路が渋滞していることを思えば、逆に早かったかもしれない。」と山田さんの言葉。やさしい。
Trappist Westmalle ウェストマレ修道院
アントワープからマレmalleの町に伸びる通りであるAntwerpsesteenwegを走り、やがてマレの町が近づいてくる。あたりは森林に囲まれている。マレの町は東と西に分かれていて、西にある方がウェストマレWestmalleである。通り沿いにあるものと思い道の両側を確認しながら車は走る。Westmalleのビールの看板がちらっと見えたが修道院らしきものを発見できずに町中まできてしまった。「通り過ぎたようですね」と引き返す。さっき見えた看板までくると、そこは、修道院ではなく、よく本にも紹介されている修道院の向かい側にあるTrappistenトラピステンというカフェであった。そこに車を止め、確認すると、確かに道を隔てて遠くに修道院が見える。通りに面したところに石の門がある。車でその門から入り、しばらく進むとウェストマレの修道院に着いた。
ウェストマレ修道院は1794年創設。1836年に修道僧が自家用としてビールを醸造し始め、1870年代にウェストマレ村にだけに限り売られるようになり、1920年に本格的な商用醸造が行われるようになった。
修道院の玄関前の駐車場に車をとめ、木戸をたたく。いや呼び鈴である。しばらくすると神父さんが出てきたので、ブルワリー見学の旨を申し出るが、ここは修道院の玄関で、ブルワリーではないので、裏のブルワリーに回って欲しい旨伝えられた。
修道院の入り口 |
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神父さんが出てきた。 |
修道院の裏側に車を回す。修道院の回りには堀がめぐらされ、そこにはアヒルやカモが泳いでいる。広々とした畑が広がり、道は太い木々の並木道となっている。
お堀に掛かる橋を渡るとブルワリーの入り口。ブリワリーの方の建物は改装中で、完成予定図が描かれていた。看板には見学時間が記載されていて見学できそう。実は見学のアポをとっていなかったである。
ブルワリーの入口 |
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見学の交渉をするが |
瓶詰めの工程 |
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瓶に王冠をつける工程 |
ブルワリーは巨大 |
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ケースや樽が並ぶ |
ビールを運搬する大型トラック |
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トラピストビールの年間生産量
順位 |
ビール |
年間生産量 |
1 |
ウェストマレ |
120,000hl/年 |
2 |
シメイ |
105,000hl/年 |
3 |
ロシュフォール |
15,000hl/年 |
4 |
オルヴァル |
40,000hl/年 |
5 |
ウェストフレテレン |
4,600hl/年 |
6 |
アッヘル |
500hl/年 |
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工場内に入り見学の申し出をするが、残念ながらこの日は見学できないという。理由はよく分からないまま、カフェ・トラピステンに行くように説明された。結局、見ることが出来たのは、建物の窓ごしに、ビールの瓶詰め工程と、出荷を待つビールケースや樽生ビールだけであった。
それにしても、建物が大きい。以前シメイのボトリング工場の建物を見たときもその大きさに驚いたが、トラピストビールに対して、「修道士による手作りビール」というイメージを持つのは間違っている。意外にも、ウェストマレは、シメイを抜いて、トラピストビールの中で一番生産量が多いのである。
【データ】 |
Brouwerij Westmalle/Abdij der Trappisten van Westmalle |
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Antwerpsesteenweg 496, 2390 Malle |
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http://www.trappistwestmalle.be/(工事中) |
Café Trappisten
車を再び、カフェ・トラピステンまで移動する。修道院の紹介で、この店に来た旨を伝えると、一番奥の個室に我々は案内された。個室では、モニターが設置されており、そこで、約20分のウェストマレ修道院のビデオ(英語版)を見る。
ビデオには修道院長が登場し、オランダ語(英語のアフレコ付き)で、修道院や修道僧の生活などを話していた。なお、”Westmalle”のmalleは、「マーレ」と伸ばして発音するには伸ばしすぎ、「マレ」とするには短すぎ。「マール」ではない。やっぱり日本語表記は「ウェストマレ」かな。
ウェストマレの自慢は、酵母(イースト)である。酵母を自家培養している。ビデオの中でも酵母に時間を多く割り当てていた。ホップは毎年変えている。イングリッシュ・ファグルEnglish
Fuggle、チェコザーツCZ Saaz、スチリアン・ゴールディングスStyrian Goldings、ジャーマン・テトナンガーGR
Tettnangerなど5〜6種類のホップを試してその年ごとに決め、複数のホップを使用している。
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ビデオ・タイトル |
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修道院長 |
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ホップを投入 |
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コンピューターによる酵母管理 |
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ウェストマレ酵母の顕微鏡写真 |
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タンクが並ぶ |
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さて、カフェ・トラピステンのメニューには、当然ウェストマレのビールが。ウェストマレ・ダブルは樽生のみ。トリプルは瓶のみ掲載されている。ダブルの瓶は置いていない。また、トリプルの樽は存在しない。他にさすがにアントワープの近くなので、デ・コーニンクの樽生やステラ・アルトワの樽生がある。
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メニュー |
瓶ビールには目ぼしいものはなく貧弱であるが、なにより、ウェストマレの新しい飲み方、発見があった。それは、ハーフ・アンド・ハーフTrappist Westmalle Half & Halfである。トリプル瓶を半分注いだあとダブル樽生を注いでできあがり。どんな味といえば、香りがトリプルで、トリプルの苦味があるが、ダブルのコクも併せ持つ味。家庭でもトリプルとダブルの瓶があれば、ハーフ・アンド・ハーフを手軽に作れるところが楽しい。そして、もう一つ、Trappist Westmalle met grenadenである。ダブル樽生にグレナデン(ザクロ)シロップを入れたもの。色も泡も赤くなり、甘くてフルーティ。ジュースのようになる。
Trappist Westmalle Dubbel van't van
(33cl)
Trappist Westmalle Half & Half
(33cl)
※トリプル瓶とダブル樽生をブレンド。
先にトリプルをグラスに注いでいた。
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Trappist Westmalle met grenaden
(33cl)
※グレナデン・シロップとダブル樽生をブレンド。グレナデンはザクロのこと。
ビールの色調も赤くなる。 |
メニューには軽食もあり、コロッケやサンドウィッチ、スパゲッティなどがある。おつまみにチーズをいただいたが、このチーズもウェストマレ修道院製のチーズである。チーズには必ずマスタードが付いてきて、チーズにマスタードを付けて食べる。これがなかなか美味しいのである。チーズにマスタードの組み合わせは、別に珍しいものではなく、ごく一般的なものらしい。
店内では、他にウェストマレ修道院のパンフレット(無料)や修道院関連の本も販売している。ウェストマレ関連のビールグッズの販売があればいろいろ購入したのに、そうした物の販売はなかった。
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