第4回ベルギー王国ビール探訪記(9)

4日目(1)
1.カンティヨン醸造所 Brasserie Cantillon
2.ビエール・アーチザナル Bieres Artisanales 
 
 

カンティヨン醸造所 Brasserie Cantillon

カンティヨン醸造所

 ベルギー4日目は早朝8時にホテルを出発。カンティヨン醸造所とクロンベ醸造所へ。この日は本来自由行動の日なのであるが、山田さんがゾッテヘムのクロンベ醸造所に行くというので、それなら一緒にいきましょうということになった。前日の不摂生にたたられた砂場氏とその介護のため早瀬氏は不参加。車に2名の空きが出来たので、清水夫妻を誘う。ランビックビールの有名メーカーだから見ておいて損は無いということで、急遽同行することになった。

 カンティヨン醸造所はブリュッセルのミディ駅近くにあり、街中の醸造所である。奉行と与力が訪れるのは平成7年(1995)12月以来で、約4年ぶり。カンティヨン醸造所が設立されたのは1900年。ちょうど創立100周年の記念の年に訪れたことになる。

 カンティヨン醸造所は伝統的な自然発酵ビールの醸造所で、年間950hl(95,000リットル)のランビックを醸造する。現在は創始者の孫娘婿のジャン・ピエール・ヴァン・ロワ(Jan-Pierre VanRoy)さんが当主として、長男ジョン、長女マガリーの夫パトリックで醸造を続けている。1978年からその伝統ある発酵方法の保存のために、醸造所自体をグーズ醸造博物館として一般に公開している。
 木の扉を開けると、早朝にもかかわらず、娘さんのマガリーさんが受付にいて、入場料を支払う。入場料は見学後に味わうビールが1杯なら100BF、2杯なら200BFということで、単純にビールの代金だけである。見学コースを一緒に回ってくれるわけではなく、パンフレットに記載された順番に勝手に醸造所内を見学するというもの。
 以前には無かった日本語のパンフレットがあった。これは、カンティヨンのビールを日本に輸入している小西酒造(株)が翻訳したもののようで、日本人見学者にも便利になった。

 以下、醸造の工程順に、醸造所を案内する。

原材料
原材料は、1回の仕込みで、小麦35%(450kg)、大麦麦芽65%(850kg)、ホップ(22kg)を使用する。なお、小麦はブラバント産の麦芽にしていない小麦、大麦麦芽は数種類の麦芽を使い分けている。ホップは古いホップを使用する。あくまで保存のためなので、苦味がきつくならないように古いホップを使用する(通常の約3倍の量)。

穀物倉庫
小麦、大麦麦芽、ホップの保存には通気性の良い屋根裏が適している。
麦芽粉砕機
屋根裏(3階)の穀物倉庫から麦芽が投下されると下の階(2階)にある麦芽破砕機で、破砕される。粉砕の度合いにより、ろ過の具合や取れるビールの量が変わるので重要である。
マッシング槽
破砕された麦芽は、さらに下の階(1階)にあるマッシングタンクに送られる。粉砕された小麦と大麦麦芽合計1300kgをタンク中央の攪拌プロペラによりお湯と混ぜ合わせる。2時間で温度は45℃から72℃になり、糖化が起こる。ここでプロペラを止め、静置し、二層に分離したのちお湯を加える。小麦と大麦麦芽の糖分が溶け出た液体をウォートと呼び、ポンプで上の階のボイリング・タンクにポンプで移される。
 なお、タンクに残った粕は家畜の飼料として利用される。
ホップ・ボイラー
ボイラーは赤銅製で、2基ある。ちょっと外観は異なるが、中を見るとホップとウォートを混合するプロペラと、蒸気を循環させるコイルがあることがわかる。
 煮沸前の約10,000リットルのウォートに約20kgのホップを加える。2つのタンクで約3〜4時間ボイルされ、殺菌する。この間2,500リットルが蒸発し、糖分の濃度が高くなる。
 煮沸後に残った7500リットルのウォートはフィルターでホップを取り除く。
冷却槽
7500リットルのウォートは、ポンプで屋根裏の冷却槽に移される。冷却層は赤銅製で、浅く表面積を広くとった形状をしている。これにより、効率よくウォートが冷却され、空気に触れることになる。
 ウォートは18度〜20度に冷却されるのが理想で、冷却は夜間に行われる。寒い期間にしか冷却できないので、ビール造りは10月下旬から4月初旬にかけて行う。
 
天井の隙間
 天井には無数の穴が空いており、外界と部屋の中は、空気が移動できる。夜間、天井の隙間から、冷却層の上に天然の酵母が降り注ぐ。ウォートは40度まで下がると、天然の酵母が根付きはじめる。
ステンレスタンク
 翌朝、冷却されたウォートはステンレスタンクに移され、最終的に温度とプラトー度(酵母により、アルコールに変わる糖分の量)が調整される。
樽貯蔵室
 ウォートは、カシワ材か栗材の650リットルの樽11個と250リットルの樽26個に詰められる。
 数日後、自然酵母とウォートの糖分が反応し「自然発酵」を始める。始めは発酵が激しく、3〜4日間は樽の蓋を閉めず開口しておく。口からは白っぽい泡が出てくる。1樽で5〜10リットルのウォートが失われるという。
 4〜5週間過ぎると、今度はゆっくりした発酵が始まり、樽は密閉される。このブレンドしていない状態がランビック・ビールであり、複雑な発酵が最低3年間続く。
 ワインと異なり、蒸発し目減りした分を樽に補填することはないので、3年間で約20%目減する。
ろ過機
 瓶詰めの際には、ビールをポンプで大樽に移動するが、その際、沈殿していた酵母がビールの中に入り濁るのを防ぐため、フィルターでろ過する。セルロースの詰まった5層のフィルターは酵母の死骸はろ過するが、瓶の中で再醗酵するのに必要な糖分は通過する。
ボトリング
 ボトリングは1時間に1200本のスピードで瓶詰めされる。コルクで栓がされたあと、夏に高温でコルクが飛ばないように、さらに王冠で栓がされる。

 瓶はベルトコンベアーで貯蔵庫に運ばれる。
貯蔵室
 貯蔵室には全体で60,000本のビールがストックされている。瓶内再発酵に最低6ヶ月かかり、市場に出すまでに約3年かけているという。
ラベル貼り、出荷
 醸造して樽で3年、瓶で3年もの月日を発酵、熟成したビールは、ラベルを貼られて市場に出て行く。

 見学が終わり、初めの受付場所にもどると、早速、ビールの試飲である。試飲したビールは、以下のとおり。

  1. 2年もののランビック
  2. 1年、2年、3年もののブレンドのグーズ
  3. ロゼ・ド・ガンブリヌス
  4. ビネロン
  5. ファロ
ヴァン・ロワさんと一緒に撮影

 醸造所の売店では、ビールの他に様々なグッズを売っている。ビールも日本に輸入されていない種類のものもあり、ちょっと重いが、大瓶3本を購入する。これが失敗のもとで、後日でオッド・ベールセルやドリー・フォンテネンを購入したくても持ち帰れないという辛いことになった。

 さて、ビールを味わっていると、あとから日本人の方が一人で醸造所見学にやってきた。話を伺うと、渋谷のベルゴが支店を出すのに伴い、出店前にヨーロッパのカフェの現状を知ろうということで数カ国を回っているという。その人こそ、現、新宿フリゴの伏見店長であった。 この日のスケジュールも押してきたので、我々はカンティヨン醸造所をあとにした。

【データ】 Brasserie Cantilon (Rue Gheude Straat 56,Bruxelles )
Tel (02)521.49.28 /Fax (02)520.28.91
http://welcome.to/cantillon

ビエール・アーチザナル Bieres Artisanales 

ビエール・アーチザナル

 カンティヨン醸造所のあと車で市内のビアショップへ向かい、ビールをさらに購入する。店は昨年最終日に行ったビエール・アーチザナルである。

 幸運にも、店は開いていた。中に入ると、やはりそこはベルギービール天国。レジのカウンター前には幻のトラピストビール、ウェストフレテレンが3種類ともケースで山積みになっている。
 この店の価格は良心的である。グランプラスそばのビア・テンプルなどは、観光客価格で、市価の倍で売っている。それでも、ウェストフレテレンの価格を尋ねると「このビールは高いです。120BFです。でもこのビールはとても珍しいビールでこの価格は正当なものです。」という。120BFは約500円。しかし、他の一般的なビールの価格が50BFくらいなので、比べると倍の価格である。いずれにしても安いと思う。
 セゾンビールやランビックビールの品揃えもよく、あれもこれも欲しいとカゴにビールを入れると、もう10数本にもなっていた。それを断腸の思いで精査して、本数を減らす。それでも多すぎと思われたが、ホテルで飲んで本数を減らし、帰国時までにはなんとかなくなっていることを目指そう。

 みな、それぞれ多くのビールを購入し、箱詰めされてビールを車に積む。車は大量のビールでかなり重くなったはずである。ビールを満載し、我々は次の町、ゾッテヘムに向かった。

ウェストフレテレンのケースが並ぶ 棚には知らないビールも多い
【データ】 Bieres Artisanales /Beer Mania (174 Chausee de Wavre 1050 Ixelles Brussels)
Tel 32.2.512.17.88 Fax 32.2.511.32.
http://www.beermania.be/

(つづく)


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