第4回ベルギー王国ビール探訪記(12)

5日目(2)
3.アベイ・デ・ロック醸造所 Braserie de L'Abbaye des Rocs
4.Le Zageman
5.ケルダルケ Kelderke
6.シェ・レオン Chez Léon
7.ホテルの部屋にて

アベイ・デ・ロック醸造所 Brasserie de L'Abbaye des Rocs

アベイ・デ・ロック醸造所

地下が事務所、地上は住まい。
醸造所のガレージ?の建物が並ぶ

見学コース最大の難所!

 トゥルネーからアベイ・デ・ロック醸造所へは、主な幹線道路がないので、地図と標識の確認をしながらの移動であった。途中、「Blaugies(ブロジー村)」の看板を見る。この村にもブロジー醸造所というセゾンビールの醸造所があって訪れたいところであったが、約束のアベイ・デ・ロック醸造所へ急ぐ。
 アベイ・デ・ロック醸造所があるモンティニー・シュル・ロック(Montignies-sur-Rocs)は、村というより集落である。走ってきた道を標識どおり右折すると、ちょっと密集した家々があったが、その後どんどん山道になっていく。「ちょっと変ですネ」と再度引き返し、元の道をしばらく走ると、道路に突き出したビール瓶の看板があり、そこに醸造所があった。集落の中心とは離れた場所にある。

 アベイ・デ・ロック醸造所は、面白い醸造所である。
 もともと、ここのご主人が自宅のガレージでビール醸造を行っていた。本業は公務員で、趣味で週末だけのビール造り(50リットルを2週間に1回)を行っていた。そのビールが美味いということで1979年から販売を始めたのが醸造所の由来である。
 ビール名のアベイ・デ・ロックは、先ほど間違って登っていった岩山に昔あった修道院の名だという。
 現在では、ご主人のジャン・ピエール・エロワJean-Pierre Eloirさんより、もっぱら娘のナタリーNathalieさんが醸造を担当している。他に地下の事務所でパソコンをやっていた若い男性とご主人の奥さんのたった4人でやっている家族経営の醸造所である。

 ナタリーさんとお母様の二人に醸造所の案内をしていただいた。まず、昔はガレージであった醸造設備がある建物に向かう。シャッターを開けて中に入る。いくつかの建物(ガレージ?)が並んで見えたのだが、中ではすべてつながっている。醸造所の規模を少しずつ大きくしていった名残だという。
 ビールが売れるようになって、生産規模を増やすため、大きな設備が必要になり、その都度建物を足していったというのである。1979年開始以来、1987年、1991年、1993年、1996年と建物や設備を大きくしていき、現在では年産1000hlの醸造規模がある。

 計画的な設備導入ではなかったということは、見学をしていて良く伝わった。様々な醸造設備が建物に無理やり入れられているという感じで、所々壁、天井が壊されていたり、地面を少し掘ったりでどうにか建物に収まっている。その分人が通る通路が犠牲になっていたりして、例えば、醸造釜がある建物の2階の部屋(屋根裏部屋)には麦芽破砕機があり、そこから下の階のマッシュタンクに麦芽を入れるのだが、その2階に行くためには、2つ離れた建物のはしごを登り、小さな窓から2階の部屋に入る。建物の2階はそれぞれ窓で繋がっていて、もう1つ窓を越えてやっとたどり着くというあんばいである。あとで判ったが、モルトの貯蔵庫は地下にあり、その地下から2階のこの部屋の麦芽破砕機までどうやってモルトを運んでくるんだろうか。

 地下にある倉庫に行くには、作業用の昇降台を使わねばならない。我々見学者全員を乗せて昇降するには不安な感じである。水元さんは、「私はいいです」と言って乗るのをやめた。スイッチが入ると、ガクンといって台は下がり始めた。地下にはいくつかの部屋があり、モルトやホップを貯蔵している。ホップは、圧縮されたブルワーズ・ゴールド(写真)とペレットのテトナンガー(独)を使用している。他にチェコのザーツも使用しているようだ。マイナスの温度で貯蔵しているので、温度調整器には霜の塊がついている。寒い。
 大きな部屋には、出荷を待つだけのビールのケースが山と詰まれていたが、この部屋の明かりのスイッチはなんと、ケースの山の裏側だ。ナタリーさんは、ビールケースをよじ登り、天井とケースのすきまを腹ばいになりながらケースの向こう側へ行き、ライトのスイッチを入れた。(スイッチくらい手前に設置すればいいのに。人一人通れるようにケースに隙間を空けて並べればいいのになどとくだらないことを思う。) 見学が終わって消すときも同様である。随分大らかなのである。


明かりのスイッチは、ケースの向こう。ナタリーさんはケースをよじ登って裏側へ行く。

ブルワーズ・ゴールド

モルトの配合率はこんなもの。

見学が終わるとご自宅の居間に案内された。そこは、昔ながらの民家の居間の造りで、暖炉やおおきな食卓、アンティークな家具類などがあり、落ち着いた雰囲気で、普段の生活を垣間見るようであった。

さて、席についた我々は、ご主人が注いでくれた次の4種類のビールを試飲した。


Jean-Pierre Eloirさん(右)と
娘のNathalieさん(左)

醸造所の入り口の看板
試飲の間、ビールの仕込み水をいただく。水をスプリング・ウォーターと呼んでいたが、これはかなりの軟水であった。アベイ・デ・ロックの柔らかさは、この軟水によるものであろう。また、地元モンティニー・シュル・ロックのチョコメーカーのチョコレートをいただいが、美味しいものであった。

さて、しばらくすると、ご主人は、飲み残したビールを混ぜ始めた。ブロンシュ、モンタグナード9°とアベイ・デ・ロックの3種類のブレンドである。みなさんぜひどうぞと勧められたいただく。ここのビールの特徴はないが、アベイ・デ・ロック醸造所の個性というものが残っていて、面白い。こういう飲み方も、醸造者ならではである。

もう、外は暗くなり、我々も帰らねばならない。車を運転する山田さんも試飲していたので、大丈夫かと心配するが、ご主人は、「酔っ払っても大丈夫。田舎だから大丈夫だ。おまわりさんも飲んでいるから。」と言って我々を見送ってくれた。

【データ】 Brasserie de l'Abbaye des Rocs(37, Chaussee Brunehault 7387 Montignies-sur-Roc)
Tel: +32 65 75 59 99 Fax: +32 65 75 59 98
http://www.abbaye-des-rocs.com/

(つづく)


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