第3回ベルギー王国ビール探訪記(2)

初日
1.出発
2.到着・情報収集
3.スピネコプケin’t Spinnekopke
4.オー・ボン・ヴュー・タン Aux Bon Vieux Temps
5.初日の夜・ホテルで

 出発

 出発は1月9日(土)、ブリュッセル直行のサベナ・ベルギー機SN207。直行といっても12時間はかかる。その間は、機内サービスの酒しか飲めないが、ベルギーのナショナル・フラッグ・キャリア であるサベナでありながらも、ビールはMAESSTELLA ARTOISの2種類のピルスナーしかない。世界に誇るビール王国なのだから、せめてホワイト・ビールやクリークが飲めるよ うに状況を改善して欲しいものである。いずれにせよ、ベルギービール探訪のビール・メモは、今回もこの2 種類のビールから鑑評をはじめることになった。

ステラ・アルトワ マース
STELLA ARTOIS 25cl 5.2% 
ビターで、かすな麦汁の甘味、ピル
スナーらしい★★
MAES DOUBLE FILTRATION A FROID
25cl 5.1%
2回ろ過しているのでクリアー★☆

 到着・情報収集

 ブリュッセル空港に到着すると、タクシーに分乗してホテルに向かう。ホテルは、グラン・プラスにも歩い ていけるという立地のアトラス・ホテルで、そういえばブラッセルズ原宿店の岡店長もブリュセルではこのホ テルに泊まったと言っていた。日本とは8時間の時差があるので、現地時間では、まだ夕方5時台。夕食までは自由行動ということで、奉行所の3人はさっそく現地のビール情報の収集のため、 アドルフ・マックス通りにある書店W.H.SMITH(英語の洋書屋さん)に向かう。

Timm Webb の"Good Beer Guide To Belgium and Holland"の第3版(710BF) Michael Jacksonの "The Great Beer of Belgium"のビール4本付きのセット(995BF)。本のみだと975BFで、20BFしか違わない。

 目当ての本は、第2回目の探訪旅行の後に発刊された、Tim Webbの“Good Beer Guide To Belgium and Holland ”の第3版とマイケル・ジャクソンMichael Jacksonの“The Great Beer of Belgium”の第3版である。Tim Webb の本は、ルクセンブルグのビールが追加され、さらに内容が充実していたが、第2版にあったビア・カフェの評価 (★★★★★が満点)が削除されてしまい、我々は、この★の数を参考にしてカフェを探していただけに残念である。

 マイケル・ジャクソンの第3版は、内容が最新の情報に更新されているだけでなく、ワロニア地方のビールについての記述が増えたようである。豊富なカラー図版が楽しく、貴重なので、この第3版は、是非とも図版を残 したまま日本語訳されることを願う。なお、本とベルギービールの箱入りセットが、売り場に高く積まれ ていて、単独に本を買うよりもお徳だったので、セットの方を購入した。セットとして組まれていたビール は、本の中でも紹介されている@Hoegaarden Blanche、ARodenbach Regule、BTripel Karmeliet、 CWestmalle Dubbelの4本であった。

 ワロニア・ビールについては、前回購入したJohn WoodとKeith Rigleyの共著による“The Beer of Wallonia ”が棚に並んでいたので、代官に本の購入を薦める。  これらの本を購入し、とりあえず最新の情報を得たつもりになって、我々は一安心であった。  このあと、ホテルに戻る途中で、デレーゼDELHAIZE というスーパー・マーケットのチェーン店の売り場を覗き、ビールが多数並ぶ中から 、夜部屋で飲むビールを何種類か選択して購入した。

 スピネコプケin’t Spinnekopke

 この日の夜は、全員揃ってウエルカム・ディナー。当初グラン・プラスのブラバン公爵の家の地下にあるケルダルケ ’t Kerderke に行く予定になっていた。しかし、電話をすると予約は受けないということなので、わざわざケルダルケに行って店に入れないよりはよいだろうと、第2候補のスピネコプケin’t Spinnekopke に行こうかということになった。スピネコプケは、前回の旅行でも立ち寄った店だが、そのとき指にナイフで怪我を負うというハプ ニングがあり、私にはあまりよい思い出のない店。山田さんも「名和さんはあまり行きたくはないでしょうが……」と気にしている。 乗り気はしないが、再び行くことにした。

 スピネコプケは、ビールを使った料理で有名な店である。ボア・セレストの山田さんが1品ごとにメニューの料理を解説してくれたので、私はそれ、ぼくはそれ、とそれぞれに名物料理を注文した。その間、店の人はアペリティフとしてビール・ベースのカクテルを薦めるので、全員でいただくことにした。ホワイト・ビール(ヒューガルデン?)に何かを入れた物で、山田さんは「チェリーを入れたものでは?」と分析する。フルーティで飲みやすい。あとでそれが、この店オリジナルのカクテルAPERITIF“IN SPINNEKOPKE ”(creme de cerise et biere blanche )とわかった。  メニューにはビールが100種類ほど掲載されており、樽生ビールの項には、BEL PILS、BLANCHE MAREDOSUOS 6°、LAMBIC le verre 、LAMBIC le litre、FARO le verre 、FARO le litreの7つ(実際には5種類)が載っていた。この店のランビックビールは、カンティ ヨン醸造所からの樽生であるという。山田さんは「どれもおいしそうですね。……?。ファロ?カンティヨンにファロなんてありましたっけ?」と知らないものがあるということで、店の人に確認したら間違い無くカンティヨンのファロであるという返事。「もし 本当なら、レア物ですよね」と我々はこの珍しいビールに心をうきうきさせ、全員でファロを注文。「瓶にするか、ピッチャーにするか」と聞かれた(瓶もあるのか?)ので、ピッチャーを2つ注文。味わいはまさしくカンティヨン。カンティヨンの特長である鋭い酸味に加え、まろやかな甘味が調和している。普通は甘く施されて誰もが飲みやすいファロであるが、グーズのような複雑な味わいになっている。素晴らしい。ダークな色合いは、ダークシュガー(キャラメルシュガー)で味付けしているためである。

APERITIF"IN'T SPINNEKOPKE"
(155BF)
(creme de cerise et biere blanche )
FARO le litre (250BF)。
ピッチャーから カンティヨンのグラスに注ぐ。泡立ちよく、 うすく濁っている。フルーティでバランスのとれた味わいは素晴らしい。★★★★
ZATTE BIE (Brouwerij De Bie)
 9.5% (75cl 360BF)
カラメルの甘味が強い。引き込まれ るようなスパイシーな香りは魅力。
★★☆。Zat(=酔っ払った)

 さて、次のビールは「奉行所の方たちで、飲みたいものを何か頼んでください」という山田さんの薦めで、飲んだことのないビールをメニューから探す。前々からユニークなラベルの絵で興味を持っていたザット・ビー Zatte Bieを注文。山田さんも「私もそのビールは気になっていました。」という。ブラウンというより黒に近い色で、ローストした麦芽の風味もあるが、ダークシュガーの甘味が残る相当甘いビールで、「これはちょっとダメですねぇ〜」との発言も飛び出した。酵母とシュガーを瓶詰め時に投入した瓶内二次発酵のビールなのだろうが、糖の入れすぎという感じ。それでも9.5%もあるアルコール度数の高いビール。もっと長期熟成させると美味しくなるかも知れない。 山田さんはビールを評価するために、日本から用意してきた自前の鑑定表(ビール評価シート)に、色・香り・味わいをチェックしなが ら記入していたが、なんと棒温度計にも似た比重計を取りだし、グラスに入れて計測し始めた。しかし、「比重計は、ちゃんとビールの中に沈めないと計れないんですよ。グラスの中では、ちょっと計れませんね。」と断念した様子。しかし、比重計まで持参するなんて、 さすがプロ。さすが日本におけるベルギービールの第1人者の一人だなぁ〜と一同感心する。

 夕食のビールはこれくらいにして、ホテルに戻った。 

It'SPINEKOPKEで食べた料理の数々
スピネコプケではムール貝、ニシンの酢漬、子羊の脳みそ、ホロホロ鳥、クルベット(小エビ)など食べた。 あいかわらずの鍋一杯のムール貝
ムール・パルケ(生ムール貝)
ホロホロ鳥クルベット(小エビ)
 

 オー・ボン・ヴュー・タン Aux Bon Vieux Temps

入口ホテルに一度帰ったが、時間はまだ遅くなかったので、夜のライトアップされたグラン・プラスを少し観光気分で歩こうと奉行所の3 人は再び出発。クリスマスツリーの木はもう撤去されていたが、街中まだクリスマスの飾り付けをそのままに新年の飾り付けとしている のか、装飾されていて全体に華やいだ雰囲気が感じられた。ビール醸造博物館やブラバン公爵の家の地下にあるこの日の夕食の第候補だ ったレストラン、ケルダルケ’t Kerderkeの場所を確認する。後でわかったことだが、ケルダルケにはオリジナ ルのビールがあるというから、「やはりケルダルケにすればよかった。」とは与力の弁。

 ベルギーは初めての代官にも「酒蔵奉行所通信(特別第3号・特別第4号)」でも紹介したグラン・プラス付近に いつくかあるカフェやビア・ショップの場所を確認してもらった後、まだ訪れていないカフェ、 オー・ボン・ヴュー・タン Aux Bon Vieux Tempsに入った。

 オー・ボン・ヴュー・タンは、同様に有名なカフェのリマージュ・ノートルダム L’Imaige Nostre Dameとは10数mしか離れていないところに有り、建物を一つ挟んで右側がオー・ボン・ヴュー・タン、 左側がリマージュ・ノートルダムという立地で、建物と建物の隙間にあるアーチ(門)をくぐって奥の入口行く構造ま でそっくりである。ビールの品揃えもきわめて似ていて、メニューには30種類ほどのビールがある。この店のお薦めは、 店名と同じ名のビール、ヴュー・タンVieux Tempsである。注文したビールは与力がヴュー・タン樽生、私(奉行) はリマージュ・ノートルダムのお薦めビールでもあるブルゴーニュ・デ・フランドルBourgogne Des Flandres樽生、 そして代官はモール・シュビット・グーズMort Subite Gueuze樽生である。ヴュー・タンは、5.5%のアルコール度数で、 グラスに口をつけたときに感じるはじめのフルーティな香りにもかかわらず、すぐに苦味が際立ってきて、味わいがあまりない ビールである。フレッシュ感に救われて★★とした。ブルゴーニュ・デ・フランドルは、ランビック・ビールメーカーとして知ら れるティメルマンTimmermans社のレッド・ビールであるが、ランビックにブラウン・エールをブレンドしている。ブルゴーニュ の赤ワインと同じく輝きのある赤色であるばかりでなく、ワインと同等の酸味も有しており、ブルゴーニュというビール名は まさに的確。やや甘味もあり、樽生ゆえのフレッシュさ、さわやかで、★★★に評価。モール・シュビット・グーズは甘味をつ けたグーズ。飲みやすくするために甘味をつけたランビック・ビールが多数あるが、フルーティだがどこか人工的である。 フレッシュさにより★★☆とした。

カウンターもある。 左からヴュータン/ブルゴーニュ・デ・フランドル/モール・シュビト
手前がリマージュ・ノートルダム。向うにオー・ボン・ヴュー・タンが見える

 初日の夜・ホテルで

ホテルに帰ってきて、いよいよ本日の締めのビールを味わう。先にスーパーで購入しておいたビールのうち3種類を部屋で飲む。デレーズ DELHAIZEというチェーンのスーパーで購入したものだが、たまたまこの日購入したビールはこのスーパーの独自ブランドのビールばかり。DELHAIZEブランドは、オランダのBierbrouwerij De Leeuwに醸造委託している。Premium Special Biere Ambreeはアルコール度5.1%の英国エール風のビール。やや苦味がありキレイだが、味わいうすい★☆。Blanche du Vergerは甘酸っぱいがアルコール度3%で、テーブルビールの様である★☆。Christmas Biere de Noelは、アルコール9%の赤色のビール。苦味と甘味があるが調和していないし、何より妙な味わいがある。キレはあるが、この手のビールには、キレよりコクとが深い味わいを求めたいところ★★。結局、このスーパーマーケット・ブランドのビールは全く期待はずれの不味いビールであった。スーパーには、結構多くの種類のビールが並んで、目を楽しませてくれるが、たまにこんな大外れがある。なお、これらのビールは、すべて与力の選択により購入したビールなので、彼は責任をとって、ビールをすべて飲み干さねばならなかった。(気の毒……)

  ★  
旅行初日のこの日、結局我々は、サベナ機内で飲んだビールを含め、10種類のビールを味わった。1日で10種類と好調なスタートを切ることができ、今回の旅行では何とか100種類のベルギービールを味わおうという意気込みすら抱いていた我々だったが、このあとインフルエンザや体調不良により、徐々にビールを味わう本数が減っていくことになった。                     

(奉行)

【データ】 IN‘T SPINNEKOPKE(1 Place du Jardin aux Fleurs,Bruxelles)
Tel;02 511 8695月〜金11:00〜23:00、土18:00〜23:00、日休
Aux Bon Vieux Temps(12 Rue Marché aux Herbes,Bruxelles)
Tel;02 217 2626

(つづく)


はじめに   2日目(1)


ベルギービールの魅力
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