第2回ベルギー王国ビール探訪記(7)

ビア・カフェ探訪(2)/アントワープ(アントウェルペン)のビア・カフェ

  最近のアントワープは、ルーベンス、ノートルダム大聖堂、ダイヤモンド加工業以外にも、パリやミラノと並ぶフ ァッションの発信地としてヨーロッパで有名になりつつある。アントワープファッションはもう日本にも上陸していて、ドリス ・ヴァン・ノッテンDRIES VAN NOTEN は青山に支店を持っている。もちろん『フランダースの犬』人気も日本人には健在で、 ノートルダム大聖堂の記帳ノートを見ると、「ネロ、ありがとう」「パトラッシュよ、永遠に!」などと日本語で書かれた記帳が後を断たない状態であった。
 さて、この街には一度に巡りきれないほど多数の素晴らしいカフェがある。特にノートルダム大聖堂や市庁舎がある旧市街の中心 地に密集している感があり、このあたりの細い路地を歩き回れば、必ずいずれかのビア・カフェに出会うはず。我々は、前回訪れた ヘット・エルフデ・ゲボットHet Elfde GebodやペルグロムPelgrom、デン・エンゲルDen Engelなどの場所を確認しながら新たなビ ア・カフェを探して歩き回った。

クインティン・マトサイス Quinten Matsijs パータス・ヴァーチェPaters Vaetje
クルミナトゥール Kulminator その他のアントワープのカフェ

◆クインティン・マトサイス Quinten Matsijs ◆

 クインティン・マトサイスはアントワープで最も古いカフェで、1565年に建てらてた建物で今も営業している。表通りから離れた路地の角にある店で、見つけるのには多少苦労する。建物の白壁には絵の具で店の由来を示す絵や文章等が描かれていて楽しい。この店の名物はゲゾデン・ウォルストGEZODEN WORST(190BF)という煮ソーセージで、アントワープ名物(メニューにAntwerpse specialitieit!!!とあった)でもある。他には、 BOERENBROOD MET ABDIKAAS(修道院チーズのせ田舎パン160BF)を頼んだが、アベイ・ビールで知られるマレッツ修道院製のチーズがパンに乗っていた。

 ビールの品揃えは平均的で、外国ビールを含め 30種類程度である。我々はアントワープの地ビール、キューベ・デ・コーニンク樽生 CUVEE DE KONINCK VAN'T VAT(95BF)を注文したが、瓶のものと比べ樽生ビールの新鮮な味わいに驚いた。 これなら何杯でも飲めそうな気がしてくる。 

店内の様子

 この店はビール評論家のマイケル・ジャクソンが静かにデ・コーニンクを味わいたい向きにお薦め*と書くだけあって、古いフランドル地方の内装そのままの落ち着いた雰囲気がよい。 平日の昼間だったが、我々以外には10名程度のご婦人方が語らうだけだった。

 *マイケル・ジャクソン『地ビールの世界(原題‘THE GREAT BEERS OF BELGIUM')』柴田書店 P187

【データ】 QUINTEN MATSIJS(17 Moriaansstraat,ANTWERPEN)評価:CAFE ★★★ BEER★★
03 225 01.70

◆パータス・ヴァーチェPaters Vaetje◆

2階から店内を見下ろす

 ノートルダム大聖堂のすぐそばにあり、店の前は大聖堂によるビル風が強かった。看板に‘Specialiteit100 bieren'と書いてあるとおり、 100種類のビールを置くのが自慢の店。店に入ると奥行はあまりなく、右側のカウンター席と左側にテーブル席だけかと思ったが、2階席もあるので狭くはなかった。我々はら旋階段で2階席に座る。メニューを見ると確かに 100種類のビールが記載してあるが、有名銘柄が多いようである。我々にはすでに味わったことのあるビールが多く、迷ったあげく注文したビールは、ハウテンコップHOUTEN KOP(「木のカップ」の意、70BF)とデコーニンク樽生DEKONINCK VAN HE'T VAT (50BF)。ハウテンコップは香味のバランスのとれたクリアーなアンバーエールでかなり旨い。

 店内をじっくり見渡すと、店の名とは1字異なるPATERS VAATJE(「神父の小樽」)と書かれてある樽が天井からぶら下げられている。大きな梁がむき出しになっていてフランドル調の雰囲気もあるが、シャンデリアやステンドグラスはアール・ヌーボー様式を感じさせる。カウンターには 100種類のビールに対応した各銘柄のビールグラスが並べられ、大聖堂前の広場から差し込んでくる日の光がグラスに反射してキラキラと美しい。ビアサーバーは5本あり、若くきれいな女性が一人でカウンターで働いている。ビールのラベルをはがして欲しい旨を伝えると、「水道水は冷たいので、ラベルがはがれない。欲しければ瓶ごとどうぞ」と言われたが、あとで清算のときしっかり瓶代を取られた。

 この日はタバコを吸うお客が多く、煙に邪魔をされて残念ながらビールをじっくり味わうことが出来なかった。そのため、新たなビールを注文することなくこの店を出た。

【データ】 PATERS VAETJE(1 Blaumoezelstraat,ANTWERPEN)評価:CAFE★★★ BEER★★★★
03 231 84.76 11:00〜

◆クルミナトゥール Kulminator◆

 ベルギーでも屈指のビア・カフェ、クルミナトゥールを再び訪れた。メニューが新しくをなっていて、ビールの品揃えは 550種類とかなり増えたようである。店の目玉であったヴィンテージビールの価格の記載は「時価」とされ、価格不明で注文し 難くなっている。店内の様子は変わっていないが、入口すぐ左側にパソコンが置かれ、ご主人が熱心にインターネットでビー ル情報を検索している姿が印象的であった。

 夕方のまだ早い時間なので我以外にはお客はいない。以前来た時と同じテーブルに席を設けると、新しいメニュー をチェックし、気になるビールを注文する。デ・クラウス醸造所のベネジクトSint Benedict 1991(120BF)は現在生産中 止のビールで、古酒があるこの店だからこそ飲める貴重なもの。セリス・ホワイトCELIS WHITE(60BF)は、アメリカ 風にカウボーイやバッファローがラベルに描かれているビールで、ヒューガルデン村のホワイトビールを復興 したピエール・セリスPIERRE CELISがデ・クラウス醸造所をインターブルー社に買収されたあとアメリカのテキ サスに移住(セリス醸造所を起業)し、デ・スメット醸造所に委託醸造させている白ビールである(味もヒューガルデン・ブロンシュ風)。 マレッツEドンケル MAREDSOUSEDONKER(85BF、青色のラベル)も珍しいビールで、日本に輸入されているのは、 2種類あるEのうち緑色のラベルのアンバーAMBEREとGIだけである。グラスも見慣れた細長く飲み口が広がって いるタイプではなく、このドンケル用なのか丸くどっしりしたタイプのオリジナルグラスで出てきた。さらにメニューには 昔醸造していたというHも掲載されており、興味を引いたが古酒なので「時価」。他に味わったビールを紹介すると、 ベルヴュー・クリーク・プリムール'97BELLE-VUE KRIEK PRIMEUR(68BF)は、毎年春に出荷されるフレッシュなランビック ・クリークで、チェリーの香味がさわやか。通常のものは果汁を加えて甘味を整えているが、プリムールは甘味の 強いチェリーを若いランビックに漬け込んだだけの純粋なクリークである。プリムール専用のグラスでちゃんと 出てきて驚き。メニューには1994年(72BF)のヴィンテージから揃えている。ヴァン・ステーンブルヘVAN STEEMBERGE醸造所のビオス ・ブラームス・ブルゴーニュ BIOS VLAAMSE BOURGOGONE 1995 は、ブルゴーニュワインを感じさせるフランドル独特のレッドビール。ヴィラーズ・トリプル VILLERS TRIPPEL(92BF)はアベイタイプのビールでヴァン・アッシェVAN ASSCHE醸造所のもの。

セリス・ホワイト

 ガラス窓からビールの保管庫が覗けるが、棚に並んだビールの列を見ると今更ながらベルギービールの種類の多さに驚かされてしまう。

【データ】 KULMINATOR(>32 Vleminckveld,ANTWERPEN)評価:CAF ★★★★ BEER★★★★★
03 232 45.38

◆その他のアントワープのカフェ◆

このつぎは訪れたい店 ビアランドBeerlandは昔の本によると、450種類のビールを置くアントワープでも屈指のカフェだったらしい。2年前に 訪ねて行こうとした時、地元のビール愛好家から「もう無いよ」と教えてもらったので、無いものと思っていた。今回そ の跡地でも見ようかと住所を訪ねて行ってみると、BEERLANDの看板がまだあるではないか。少し喜んで店に入ると、 そこは若者達のプールバーとなっていた。皆、店の奥でビリヤードに興じている。カウンターを見てもビールグラス は少し並ぶだけで、棚には主にカクテル用の様々なリキュールが並んでいる。僅かなビールメニューから我々が選ん だものは、ブルージュ・タルベビールBRUGE TARWEBIERの樽生とマース・ピルスMEAS PILSの樽生である。ブルージュ・ タルベビールの樽生にはやや酸味を感じたが、さわやかで、フレッシュなホワイトビールだった。店自体は残念ながら 再び行く価値なし!。

 スタミネーケ 't Stamineekeは約100種類のビール、隣のローデン・コーニンクRooden Coninckは40種類のビールを置くがどち らも営業時間前のようで店が閉まっていた。窓越しに店内を覗くとビールの瓶がいっぱい並んでいて雰囲気はよさそうである。
 ところで、これだけたくさんあるこの街のカフェを巡りきるには、あと何回この街を訪れなければならないのだろうか。 
(奉行)
【データ】 STAMINEEKE(23 Vlasmarkt,ANTWERPEN)評価:CAFE★★★★ BEER★★★★
03 231 96.52
ROODEN CONINCK(33 Vlasmarkt,ANTWERPEN)評価:CAFE★★★ BEER★★★
03 232 48.12

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